一進一退
仕事がまた忙しくなり、職場にいる時間が増えました。
少し気持ちが楽になったような気がしていたのですが、職場の人と話したりかかわったりする機会が多くなれば多くなるだけ、やはりみじめな気持ちが強くなっていきます。
職場の人たちはみんな頭が良く、そして健全な心の持ち主たちばかりです。
弱い人を助けようとする優しい心がありますし、常識的な倫理観も持ち合わせています。
良い人たちだと思います。
と同時に、彼らは私には無い強い自己肯定感と無邪気さを持っているとも思います。
みんな自分の話を「聞いてくださいよー」と言う風に始め、そして周りも「どうしたの?」となって会話が続いていくのですが、その話し手の無邪気さ、まっすぐさ。
「聞いてくださいよ」、「ねえ、聞いて」と言って話し始めて、きっと遮られたり否定されたりしたことが無いのだと思います。
他者への信頼感が全然ちがう。
私は怖い。人が怖いです。
私が何かするたび、たとえば歩くだけで、母は私を笑いバカにしました。
「お前の歩き方は背虫女か。おばあが歩いているかと思った!」
私が歯を見せて笑うと言いました。
「お前の歯並びは汚い、歯ぐそが付いている。歯の色が茶色い。息が臭い!友達にも嫌われているだろう」
ちょっと自分の意見を言うと
「自分が偉いと思っているのか?自分だけ冷静ぶって人がこんなに大変なのに私の気もしらないで上から目線で!!」
絵を描くと
「気持ち悪い絵。吐き気がする」
字を書くと
「ここが曲がっている、性格が曲がっているからだ」
自転車に乗ると
「足が広がっている。尻軽女か。下品な女」
寝ると
「口開けて寝てアホみたいな顔。念仏唱えながら寝てた」
下着を洗濯に出すと
「お前の下着は本当に汚い。洗っても洗っても落ちない。捨てるしかない」
思春期にお風呂でリンスをしていると覗いて
「そんなに長く髪に時間かけてバカじゃないのか、誰も見ていやしない」
一挙手一投足、全てにいやがらせを言わないと気が済まない人で、本当に言葉に毒があり、汚い言葉で人を貶める人でした。
物心つく前から母は私にそういうことを言い続けていたため、私はいつしか母の言葉を「世間一般の私への評価そのものだ」と思いこむようになりました。
他人はみんな母と同じように私のことを見ているのだと。
私はずっと学生時代から人にできるだけ見られないように、できる限り目立たないようにして息を殺して生活して来ました。
自分がこの世にいないかのようにして生活することで、なんとか自分を保ってきました。
それが今になり、仕事をするのにこんなに困るとは思いませんでした。
「だいじょうぶ、相手は自分をどうも思っていないんだ」「変に思われてもいないんだ」って自分に何度言い聞かせようが、あの母の言葉が呪いの様にしみついていて、たとえばなにか自分が行動してそれを人に見られた後、もしくは人に何か言った後、
「お前は他人から変に思われている」
「お前の心は他人にのぞかれ、汚いところが全部ばれている」
そういう被害妄想的な考えが頭をもたげてきて、一刻でも早く人前から立ち去りたくなります。
いつでも「調子にのるんじゃない」と言う言葉が聞こえてくるんです。
一体どうしたらいいんだろう?
とりあえず今自分にできることは、やはり少しでも早く仕事を終わらせて職場から立ち去ること。
それしかないのかなと思っています。
人目にさらされず家の中に居るときはとても気分が楽なのです。
後は、しばらく行っていないカウンセリングにもまた通いはじめようかと思っています。